今回は職務経験が20代後半、特に30代以降の面接対策について綴っていきます。
エンノシタではこれまでに、23歳から50歳までの様々な年齢の方を支援させていただきました。その中には、いわゆる再受験という例も少なくありません。中には学生の頃から公務員試験を受け続け、縁あって公務員面接の突破校を利用され、44歳にして合格された方もいます。
何が言いたいかと言うと、本来であれば、そうした再受験の方の中にはもっと早くに合格できたのではないかと思われるケースも少なくないのです。
ではなぜ本来であれば受かる人が、面接試験に落ちてしまうのでしょうか? 今回はこの核心に迫り、効果的な面接対策が何かということを、ひも解いていきたいと思います。
不合格の正体
再受験のためにエンノシタを利用される方にはまず初めに、「過去の面接の振り返り」を行います。
具体的には、当時の面接での質問とその回答内容をヒアリングし、第三者の視点として整理し、再評価するのです。こうした振り返りを行う中で、いわゆる「一発NG回答」をされていることは非常にまれなケースです。
では、落ちてしまった本当の原因はどこにあるのでしょうか?
一言でいえば、「ノーカウント回答」ということになります。
ここで言うノーカウント回答とは、評価に影響しない回答のことです。
ノーカウントなのに、なぜ落ちるのか?
逆評価となるような回答ならまだしも、ノーカウント回答であれば、「そもそも評価に影響しないから問題ないのではないか?」と疑問を持たれたかもしれません。
半分大正解で半分は不正解
「評価に影響しないから」落ちるんです
なぜでしょうか?
その理由は非常に単純なものです。
ノーカウント回答で落ちる理由:質問が無為に消費されるから
本番の公務員面接の時間は20分程度と限りがあります。
そうなると、面接官が質問できる数もおのずと限られてきます。具体的には10回前後が20分の面接での質問の平均回数です。
もし仮に、この10回の質問のうち、5回で評価に影響しない「ノーカウント回答」をしたとしましょう。そうすると、評価に影響する質問の数は5つになります。
つまり、学力テストの満点が100点から50点にガクっと下がるようなものです。
もちろん、実際の面接は学力テストのような得点競技ではないのでここまできれいに計算できるわけではありませんが、ノーカウント回答が面接突破に向けた大きな妨げになることはお分かりいただけたと思います。
不合格の原因の8割はノーカウント回答
NG回答といった解説はよく見かけますし、そういった回答が実際にないわけではありません。
しかし、逆評価となるような発言で落ちる受験者の割合は全体の1割程度でしかない。
なぜならほぼすべての受験者が一定以上の緊張感をもって面接に臨んでいるし、発言には少なくない注意を払っているからです。
では、不合格の本当の原因は一体何なのでしょうか? その正体こそが、「ノーカウント回答」なのです。
ノーカウント回答とは?
話したことすべてが面接官に理解してもらえるとは限りません。つまり、たとえいくら公務員に対する熱い志望動機があったとしても、面接官が求めるような経験をお持ちであったとしても、その話している内容そのものが面接官に理解されなければ評価することができません。
「え?話していることが理解されないってどういうこと?」と疑問が浮かんだかもしれません。 この、理解されないという点についてもう少し、掘り下げて説明します。
話していても評価されない理由
説明が不十分な場合や、専門用語や業界用語が含まれていると面接官の理解が追い付かないこともあります。ここで誤解していただきたくないのは決して、面接官の理解力が低いと言いたいわけではないということです。
では、なぜ理解されないのか?
面接官の立場になって考えてみましょう。
受験者であるあなたは、面接官にとっては「初対面」です。
つまり、事前に共有している情報が圧倒的に少ない。いえ、ほとんどないと言っても過言ではありません。
そのため、あなたが何気なく使う言葉や説明の仕方が面接官にとってわかりやすいかというと、必ずしもそうとは言い切れません。むしろ、十分な配慮がなければ、面接官からするとわかりづらいと感じることの方が多いはずです。
例えば、初めて訪れた地で、この周辺のことを良く知っていそうな地元のおじいちゃんに道を尋ねたとします。
「あー、○○に行きたいのね。そしたら、この先にマルヤスがあるから、そこを右に曲がって、その先にあけぼの園があるから、そこを左に行けばすぐ目の前だよ」
いかがでしょうか?
丁寧に説明してくれていると思います。
だけど、
「マルヤスって何?何かのお店?」
「あけぼの園ってなに?高齢者施設かな?それとも保育所?」
と疑問だらけで説明が頭に入ってこないはずです。つまり、前提として共有している知識や理解にギャップがあるため、おじいちゃんの丁寧な説明もかえって混乱を招いてしまいます。
また、抽象的な内容だけの回答も同様に評価されません。
先ほどの道案内の例をもう一度引用してみます。
「あー、○○に行きたいのね。そしたら、この道をしばらくまっすぐ行ったところに大きな交差点があるから、そこを右に曲がって、ちょっと行った先の信号を左に行けばすぐ目の前だよ」
いかがでしょうか?
迷子になること必至ですね。これが抽象的な回答です。
よく、面接ではコミュニケーション力が大切だと言われますが、これは大前提の力です。伝える力が弱ければ、相手に理解されず、評価以前の話になってしまいます。
では、仮にわかりやすく伝えられたとして、それだけOKでしょうか?
ここで、前回お話しした「評価対象」について思い出してください。
評価対象=能力+適性
つまり、わかりやすく自分の能力面や適性面を伝えてこそ、初めて評価につながるわけです。言い換えると、自分のことを中心にして話すことが求められています。
よくありがちなのが、事前に経験を整理できておらず、本番で話す内容が自分以外のこと、になっていることがあります。
例えば、「自己PRをお願いします」と聞かれて、
「私の強みはコミュニケーション力です。
前職の○○では、不動産の買い取りメインで行っていまして、なかなかその適正な買取価格を理解していただけないことがありました。例えば、土地面積はもちろんですが、面している道路や周辺状況などによっても、適正な買取価格は変わってきます。一方で、地主さんは当時の価格や自分にとっての住みやすさといった主観的な捉え方をされているため、なかなか折り合いがつかないことがあります。
こうした状況で、丁寧な説明を行い、交渉を成立させてきた結果、全国でNo1の買い取り実績をあげることができました。」
じつは、いくら素晴らしい実績があったとしても、この回答は全く評価されません。
なぜなら、自身の行動が明確に示されていないからです。
これでは、全国No1の実績を生み出したあなたの強みが公務員としても再現可能なものなのかどうか、面接官には判断ができません。
そのため、せっかく作った自己PRもノーカウント回答となってしまうのです。
ノーカウント回答は評価される回答に生まれ変わる
ここで、これまでの話を整理しましょう。
ノーカウント回答とは、大きく分けて2つあります。
一つ目は、面接官にとってわかりづらい回答
二つ目は、面接官が知りたい内容が含まれない回答
裏を返すと、これまでの経験から、効果的な具体例を取り出し、わかりやすく伝えていくこと。 これが、面接の準備ですべきことの一つです。
敵を知り己を知れば百戦危うからず
さて、ここまでは、どちらかと言えば、受験者自身の話が中心でした。
ただ、これだけでは不十分です。
自分のことを伝えていくにしても、面接官がどういった経験を求めていて、そのことをどのように伝えていけばいいのか、この詰めの部分をしっかりと押さえていきたいところです。
つまり、相手を理解するということです。
ここで言う相手とは、面接官という立場はもちろんのこと、さらにその奥にある「公務員」という仕事しっかりと捉えていくことです。そうでなければ、せっかく自分のことを伝えたとしても、
「話は分かったけど、職員として活かせる経験ではないな」とミスマッチを起こしてしまいます。
ミスマッチを起こさないためには、相手が求めているものを理解することです。とはいっても、相手が求めていることを把握するにはちょっとした工夫が必要です。
よく、「求める人物像は必ずチェック!」と聞きますが、これだけでは不十分です。
大切なのは、そうした人物像が求められている「背景」を理解することです。
もし、この部分への理解が不十分だと、
「そうか、コスト意識が大切なのか。じゃあ、効率化についての自己PRをしよう」
と誤った方向に向かいかねません。
面接はマッチングの場だとよく言われますが、まさにその通りです。自分ができることと相手が求めていることをマッチングさせて初めて合格への道筋が開けるのです。
受かる人の共通点
さて、ここまで聞いて、少し不安をお持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。
「自分は本当に受かるんだろうか…」
「評価されるような経験なんて、あるかな…」と。
当然の疑問であり、不安だと思います。
じつは、この部分がもっとも説明が難しい点でもあります。なぜなら、「合格の可能性」がゼロなのか、そうでないのかは一つの要因で決まるわけではないからです。
しかし、これまでの指導の経験から合格者に共通する点を導き出します。
そこで、次回は、「受かる人の共通点」というテーマでお話ししたいと思います。
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