さて、前回は本来は面接に受かる実力のある人が、落ちてしまう要因について解説するとともに、面接ではどのような回答が求められるかという、どちらかと言えば本番での話を中心にしてきました。
一方で、今回は本番できちんと実力を発揮する人の特徴、言い換えればどのような姿勢、考えで面接の準備を進めていくべきか、という点について、これまでの指導経験の中で得られた知見を3つ紹介します。
可能性を受け入れる
仮に公務員として採用される実力があったとしても、本番の面接が始まるまでにどれだけ準備したとしても、100%の確信を持つことはできないでしょう。
面接に絶対はないのです。
言い換えれば、「落ちる可能性」もあるということです。当たり前の話ですが、この落ちる可能性を受け入れることが大切なんです。もし、落ちる可能性から目を背け、否定し続ければどうなるか?
「これで落ちたらもう後がない」
「ここで受かれば人生逆転!」
といった極端な思考を助長します。
これは裏を返すと、「合格に依存する」ことになります。
お気持ちは十分に分かりますし、不合格になって喜ぶ人なんてただの一人もいません。心から公務員として働いていきたいと考えているならば尚更でしょう。
しかし、そうであったとしても、合格に依存する気持ち、あるいは失敗を極度に不安視する気持ち、言い換えれば小さな失敗さえも許容しない考えは、自身の行動を極端にさせます。
その極端な思考と行動は時に強い力を生みますが、同時に危うさも孕んでいます。
大切なのは、「絶対に受かりたい」と思い、その可能性を最大化させるとともに、「落ちる可能性もある」という事実を受け入れ、そのリスクを小さくする取り組みも同時に行うこと。
これは似ているようで、全く異なるアプローチを可能にします。
例えば、サッカー選手が重要な試合に臨む場合、彼らは勝利を強く望み、そのために技術や戦略を磨きます。
一方で、彼らは敗北の可能性も認識し、ディフェンスの強化や体力の向上など、万が一のシナリオに備える準備も行います。この両方のアプローチを同時に行うことで、試合において最善のパフォーマンスを発揮し、勝利の可能性を高めることができます。
同様に、面接の準備でも、熱心な努力と現実的なリスク管理のバランスが重要なのです。
相手軸で考える
二つ目の特徴としては、「相手軸」で考えるということです。
これは、面接の本質に根差した考え方です。
どういうことでしょうか?
よく、面接を終えた受講者の方から本番の感想が届くことがあります。
この時に「思ったよりうまく喋れました!」とか「詰まらずにスムーズに話せました!」といった感想だった場合、率直なところ「これはちょっとまずいな」と感じてしまいます。
このような感想が届いた場合、必ず、というわけではありませんが不合格になっていることが多いです。
私の経験値としては2:8で不合格です。
反対に、「自分の考えを伝えられたと思います。」とか、「詰まることもありましたが、考えを伝わったと思います。」といった感想が届いた場合、九分九厘、受かっています。
この差は一体何なのでしょうか?
それは、相手軸で考え、話せたかどうか、ということです。
「うまく喋れた」「スムーズに話せた」といった感想は、どちらかと言えば自分自身にスポットが当たっています。
一方で、「伝えられたと思います」といった感想には、面接官の存在が感じられます。つまり、聞き手である面接官の目線に立てているかどうか、ここが重要なんです。
ここで誤解していただきたくないのは、「面接官の評価」や「面接官の思惑」に意識を向けろ、ということではありません。それはあくまで面接官に伝わった後、理解してもらえた後の”結果”でしかありません。
そうではなくて、
「この話って面接官に伝わるかな?」
「自分の想いや考えってどうやったら伝わるかな?」
と相手の理解に目を向けることです。
「ノーカウント回答」の件でも詳説しましたが、どれだけ素晴らしい経験や公務員としての適性を持っていたとしても、回答した内容からそのことを理解してもらえなければ、評価にはつながりません。
何より、相手軸を持つことは、様々な考えを持つ住民や関係者と接する公務員という仕事では必須の視点です。
正解ではなく最適を目指す
受講者と模擬面接や面談をしていると、「この回答で良いですか?」と聞かれることがあります。
ですが、実際のところ直ちにこれを判断することは難しいのです。なぜなら、例えば自己PR一つとってみても、面接で話した経験がすべてではないからです。
模擬面接では話していない、それ以外の効果的な経験があるかもしれませんし、仮に話す経験自体は変わらなくても、少し視点を変えて話すだけで、より効果的に伝えられることもあるからです。
そのため、「この回答で良いですか?」と聞かれた場合は、必ずその経験の詳細をお聞きした上で、最適な伝え方にブラッシュアップしています。
これができるのは、まずは受験者自身で自分なりに面接官の視点になって、回答内容を考え、整理しているからこそです。
よく筋トレで、
「もう無理限界~!」
となったところから、トレーナーが
「あと3回!」
とハッパをかける様子に似ています。
あなたが一生懸命に取り組む。
取り組んだだけあなたの(認識の)限界に近づく。
そしてその限界を本来の最大値に引き上げる。
それが私の役割です。
動機がある
さて、ここまで合格者に共通するマインドを3つ紹介してきました。
「え?自分は全部兼ね備えていないよ」
「自信がないなあ」
と思われたかもしれません。しかし、どうか安心してください。
受かる人だって九分九厘、不完全な状態から面接準備を始めています。準備を進めるうちに自身の不足に気付き、そして補う。これを本番までに繰り返していくんです。
だから、3つのマインドは本番までに身に付ければいいのです。十分な準備も本番までに積み重ねていけばいいのです。
極論して言えば、スタートの段階で必要なのはたった一つだけです。
それは目的です。
ここで言う目的とは、「公務員として働いていきたい」という思いです。
別に「公務員としてまちを変えるんだ!」とか「すべての人を幸福にするんだ!」と言った、崇高な理念はいりません。
公務員になって、一人でもいい、目の前の人の力になりたい、
少しでもいい、地域や社会に貢献したい。
そうした思いがあれば、もう必要なものはそろっている。そうした漠然とした思いは面接の準備を進めるうちに具体化され、明確化していきます。その思いを志望動機や公務員になりたい理由として、面接官に伝えていくのです。
一方で、「公務員になることがゴール」と考える方もいらっしゃいます。
例えば、
「公務員と言う安定した身分や肩書が欲しい」
「安定した給与とボーナスが欲しい」
「充実した福利厚生が欲しい」
これらを一応の到達点にする考え方です。
私はこうした考えを一切否定するつもりはありませんし、正直なところ、私自身、そうした考えもありました。
しかし、こうした欲求だけでは合格に必要なマインドはそろわないですし、十分な準備を積み重ねることもできません。
なぜなら、「なること」が到達点なので、なった後のことに興味や関心が湧かないからです。興味や関心がなければ、調べようと思わないでしょうし、調べたとしても、能動的に理解し、思考するには至りません。
反対に、なった後のこと、合格のその先に、目が向いていれば、能動的に調べ、解釈することにつながります。
そうした行動が、今ある回答をより具体化させることになるのです。
具体化された回答は、
「真剣に考えているんだな」
「本当に公務員という仕事に魅力を感じているんだな」
と面接官に感じさせることができます。
ここまで読み進めていただいたあなたには、なることが到達点ではなく、なった後に本当のゴールがあるはずです。だからこそ、あなたには必ず合格という結果を掴み、さらに前に進んでいただきたいと、私は心から思います。
さて、この記事もいよいよ終わりに近づきました。
これから普段の仕事や生活と並行しながら面接準備を進めていかれることと思います。
そうなれば、ゆっくりと自分の将来について考える暇も取れないかもしれません。
だからこそ、今、このタイミングで考えてみませんか?
自分の将来を、合格のその先を。
合格のその先へ
さて、あなたは何をするために公務員になりたいと考えたのでしょうか?
唐突な質問ですみません(笑)
だけど、この質問って実は奥が深いんです。
例えば、さっきの質問が「何のために公務員になりたいんですか?」と聞くと、給与や安定、福利厚生、といった答えが返ってきやすいです。
目的の対象が「何のため」という名詞的な表現になっているからですね。
一方で、「何をするために?」と聞くと、十中八九、答えに窮してしまいます。
目的が動詞的な表現になっているからですね。
つまり、「何をするために」とは公務員になったあとに、自分がどうしていきたいのか、自分がどのような目的のために働いていきたいかを問うているわけです。
さて、みなさんの答えはいかがでしたでしょうか?
まだ思い浮かんでいない方はスクロールする前に10秒間考えてみてください。
合格したと仮定して、
自分が働いている姿、
そしてその5年先、
そしてさらにその5年先をイメージしてみてください。
いかがでしょうか?
何か頭に浮かんだものはありますか?
少し話題を変えましょう。
みなさんの理想の家庭像は何ですか?
「なにを藪から棒に??」と、おどろいたかもしれません。
だけど、じつはこの質問と冒頭の質問には共通点があるんです。
ですから、ちょっと思い浮かべてみてください。
あなたの理想の家庭像は何ですか?
…
そうは言っても、質問ばかりで恐縮なので、ここは私から。
私の理想の家庭像は、お互いがリスペクトしあいながら、ときに冗談を言い合いながら、笑ったり真剣に話している家庭。
それはパートナーだけでなく、子どもも含めてです。
今のところ、息子は8歳なので、大人びた会話はできませんが、それでも一人の人間として、対等な視点で語りかけたり、諭したり、怒ったり、ケンカしたりもしています(笑)
いつか、親と子でお互いの将来について語り合いたいなと夢見ています。
じつは、こうした理想の家庭像というものは、過去の自分の体験やそれに基づく価値観が反映されているんです。
先ほどの私の例でいえば、「対等な視点」がキーワードになります。
これは、もともと私が小さい頃からいろいろと思考をめぐらす性格だったことが影響しています。一つのことについて深く考えるので、その考えって自分にとってすごく大切に感じられるんですね。
だけど、その考えの結論だけ聞くと、大人からすれば笑い話になったりもします。そういうときはいつも「おれだっていろいろかんがえてるんだ」と内心ぷくぷくしていました。
だから、自分が大人になっても、自分の子どももそうですし、他の子どもの考えも尊重したいと思うんです。
さて、では冒頭の質問に戻りましょう。
「あなたは何をするために公務員になりたいのですか?」
いかがですか?
イメージできましたかね。
「ぼんやりとならイメージできた」
「全く思い浮かばない!」
人それぞれだと思います。
もし、全くイメージできなかったとしても、
大丈夫です。
公務員面接の準備を進める中で、きっとそのイメージは具体化されてくるはずです。
なぜなら、面接で聞かれる質問はあなたが何を大切にして、どのような選択をしてきたかを問う質問があるからです。
そうした質問への回答を整理する中で、
自分の考えや価値観が明確になり、
将来に対するイメージ、
つまり「ビジョン」を思い浮かべられるようになるからです。
ちなみに、私が市役所職員を目指した際のビジョンは
「総理大臣になって日本を変える!」でした。
おや?どうしました?
ここは笑うところですよ(笑)
だけど、当時25歳の時の自分は本気でした。
日本を変えるために、良くするために、まずは身近な地域から。
そう思って、市役所を志望したんです。
そして、出世して、行政のイロハと知名度を身に付けて、市長選に通って、市長になる。
市長になって実績を出したら、県知事か、国会議員になる。
そして、いずれは総理大臣に。
そうすれば、きっと日本をよくすることができるだろうと考えていました。
ところが、実際は市役所を3年で退職しました。
その後は、業界や業種も異なる仕事を4つ経験して、今に至ります。
一見すると、「ヤマトは何がしたいんだ?」と疑問に思うでしょう。
だけど、市職員を目指したときに抱いたビジョンそのものは変わっていません。
それは日本を覆う閉塞感を打開し、はたらく人、一人ひとりがはたらきがいをもって、自身の能力を発揮すること。
そうすることによって、はたらく人の人生は変わる。
一人ひとりの人生が変われば、日本は前進するはずだ。
私はこのビジョンをこれからも抱き続け、そしてその実現に向かって突き進みます。
公務員面接の突破校の存在意義
公務員面接の突破校は、単なる面接のノウハウやテクニックを提供する場ではありません。
面接対策をとおして、自分を見つめなおし、進むべき方向を見定める。
その力を身に付けていただくことを最終目標に据えて、目の前の面接を突破できるように、全力で支援させていただいています。
そうした支援をとおして、一人ひとりが「何をするために」というビジョンを手に入れ、力を発揮することができれば、きっと日本の未来は今よりもっと、明るくなるはずです。
公務員面接の突破校はそうしたビジョンを実現します。
このビジョンは、私の初めての転職である、公務員面接をきっかけにして、持つことができました。
だから私は、面接が大好きです。
自分を見つめなおし、将来の方向性を軌道修正することで、より自分の理想とする未来に近づくことができるからです。
あなたが今まさに転職をしたいと考えているのならば、きっとそれは、理想の将来像に近づくためです。その理想像は、公務員になることで実現できるかもしれませんし、さらにその先かもしれません。
だからこそ、自らの手で軌道を変えていける力を身に付けていただくために、エンノシタでは面接対策を提供しています。
ここで得た気付きや学びは一生モノのスキルになります。
そのスキルは自身の内にあるものに気付き、理想の未来に近づくための大きな力になります。
だから行きましょう。
合格のその先へ。
そして、その先にある未来であなたらしくあってほしい。
あなたが満たされれば、パートナーや家族、友人、同僚、上司。
きっと多くの方も満たされるはずです。
その総量こそが日本をより明るくするための原動力になると、私は信じています。
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