さて、前回までは私の実体験に基づく話を中心にしてきました。
今回からはそうした経験をベースにした面接指導の中でどのようなことを行ってきたのか、という点に視点を移していきましょう。 そこでまずは、みなさんに気付いていただきたい重要なことをお伝えします。
笑顔、ハキハキ、第一印象
面接では、「笑顔でハキハキと話すのがいい」「第一印象がとにかく大切」といった言説をお聞きなった方も多いことでしょう。
しかし、社会人であるみなさんにはこうした言説を是非、批判的に見ていただきたいのです。
一体どういうことでしょうか?
こうした言説が面接の本質でないことを見抜くことはそう難しいことではありません。
では早速確認していきましょう。
次のそれぞれの問いに、YesかNoで答えてみましょう。
1.笑顔でニコニコしていればそれだけで合格できるか?
2.ハキハキ話しているだけで合格できるか?
3.第一印象さえよければ、終盤では不遜な態度を取っても合格できるか?
いかがでしたでしょうか?
おそらく聡明なあなたはそれぞれの問いで即座に「No」と答えたはずです。
ではなぜ、このように一瞬で論破されるような言説があたかも真理のように、今も振りまかられているのでしょうか?是非ここまで深掘りして考えてみください。
さて、ここで私なりの見解をお示しします。
「笑顔や第一印象は確かに重要。しかし、それで合否が左右されるのは新卒のみ」
一体、どういうことでしょうか?
この意味を理解していただくために、まずは次の2つの事実をお示しします。
事実1:新卒の場合、7割近い学生が4年制大学で経済学部や法学部などのいわゆる文系出身者です。(参考:マイナビ 2021年卒大学生公務員イメージ調査)
事実2:アルバイト経験にしても個人を対象にした接客業が6割を超えます。(参考:「マイナビ 2020年大学生のアルバイト実態調査」)
さて、もうお分かりでしょう。
一言で言ってしまうと、現代の日本の学生の背景はほとんど同じだということです。(例にもれず私も接客業のアルバイトをしていました。)つまり、背景が同じなら、面接で話す内容も学生間で大きく変わりません。
となれば、面接官はどこで判断するかというと「印象面」ということになります。
なぜなら背景が似通っているとその経験も似通ってしまうので、「経験」では合否の判断ができないからです。しかし、似通っていたとしてもその中から誰かを選ばなければならない。
そこで評価に影響するのが、いわゆるコミュニケーションスキルや第一印象に代表される人柄です。つまり、面接官は一人ひとりの学生を適切に評価できない。正確に言えば、評価すべき差がないのです。
したがって、印象面が合否に比較的影響しやすいということです。(これが「新卒はポテンシャル採用」と言われる所以でもある)
そのため、顧客に学生の割合が多い予備校などでは「笑顔が大切」「第一印象が重要」といった指導は、理に適っていると言えます。
しかし、社会人経験者となれば話は全く変わってきます。
評価対象は決まっている
さて、次に、社会人経験者であるみなさんには中途採用の面接での評価対象を正しく理解していただきたいと思います。
評価対象=能力+適性
これが基本であり、大前提です。 簡単にそれぞれの要素を説明します。
能力:何ができるか、職務を遂行する上で行動として表れる外面的な個性や特徴
適性:思いや考え、物事をどのように理解したり判断しているか、といった内面的な個性や特徴
自治体や職種が変わっても、この図式は変わりません。つまり、普遍性を持ちます。これらの評価対象は言い換えると面接官が面接をとおして知りたいこと、つまり、あなたが面接で伝えていくべき事柄になります。
ここで気付いていただきたいのは、
面接を受ける段階で、あなたの評価対象は「変わらない」ということです。
それもそのはずです。
能力にしても適性にしても、ある日突然、寝て覚めたら備わっているものではないからです。何かしらの経験をきっかけとして、顕在化したり、新たに身につくものですよね。
さて、ここで前回の記事の伏線を回収しましょう。
私は前回「意欲や熱意(価値観)を示すだけで合格できるのは20代前半までだ」と言いました。
どういうことかと言うと、
社会人として、アルバイトでは決して経験できない責任ある仕事を任されることで、潜在的な能力が開発されたり、様々な経験をとおして気付きや学びを得ていきます。特に20代の頃はその傾向が顕著です。
裏を返すと、20代前半はそれらが一部未開発であるため、意欲や熱意(価値観)が面接官にとっての判断基準として重くなる、ということなのです。
つまり、もしあなたが20代前半であれば、まずはコアアンサーを中心に自身の価値観を明確にしましょう。
反対に、もしあなたが20代後半を過ぎているのであれば、それに加えて重要な準備があるということです。
年齢別の対策
さて、重要なので繰り返します。
評価対象=能力+適性
能力:何ができるか、職務を遂行する上で行動として表れる外面的な個性や特徴
適性:思いや考え、物事をどのように理解したり判断しているか、といった内面的な個性や特徴
これらの能力や適性は、面接が始まった時点でその多寡や質は確定した事実です。言い換えると、あなたの能力面や適性面を適切かつ明確に伝える準備ができているか、ここが合否に直結します。
反対に、仮に合格に値する能力や適性があなたに備わっていたとしても、それを面接で伝えることができなければ、初対面である面接官からすれば「ない」も同然です。
したがって、20代後半以降の面接対策とは、評価の対象となり得る能力や経験を伝えるための準備をおこなうこと、と定義することができるのです。
裏を返すと、本番でどれだけ笑顔でハキハキと話そうが、想定問答を作り込んでどれだけスムーズに回答できようが、合格の決定打にはなりません。
決定打は、
間違いなく、
明確に、
絶対的に、
自身の能力面や適性面を伝えることになるのです。 これが社会人経験者の面接対策の本質的な部分です。
事前にどれだけ準備しているか
さて、ここまでの話を整理します。
Point1:評価対象=能力+適性
Point2:面接対策とは評価対象を伝える準備である
今回は、最後にもう一つのポイントをお伝えします。
Point3:年齢が上がるほど、準備に時間を要する
一体どういうことでしょうか?
例えば、26歳の受験者であれば、職務経験は最大で4年程度になります。一方で、36歳の受験者であれば、職務経験は最大で14年程度となります。
では本番の面接時間はどれくらいでしょうか?
これは自治体によっても異なりますが、おおよそ20~30分です。そして、年齢が変わっても同じ試験枠であれば面接時間は変わりません。
つまり、年齢が上がれば上がるほど、1分の重みが増すのです。
では、この1分の価値を最大限に引き出すためにはどうすればいいでしょうか?
それは「可能な限り早く面接対策を始めること」です。
「おいおい、せっかくここまで読み進めたのにポジショントークかよ」と、がっかりされた方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、ポジショントークです。
商業的な意味合いが含まれていないとは言い切れません。
しかし、それだけではない。むしろそれ以上に大きな理由があります。
ではなぜ、私が「できるだけ早く始めよう」というポジションを取るのか?
それが確実な合格を目指すための唯一絶対の方法だと信じているからです。
では、早く始めなければならない理由とは何でしょうか?
その理由を一言でいうと「時間」ということになります。
20代後半も過ぎれば、仕事でも重要な業務を担当しているでしょうし、管理職ともなればマネジメント業務もこなすことになるため、家路に着くころには心身ともに疲労しています。
また、ここに加えて結婚して所帯を持っていれば、お子さんの世話や送り迎え、買い物に食器洗い、洗濯に掃除なども加わり、土日ですら自由につかえる「時間」が限られています。
だからこそ、そうした限りある時間をできるだけ有効に活用する必要があるのです。その日々の積み重ねがあるからこそ、合格という目標に届くのです。
だからこそ、「あの時こう回答していれば」という後悔をしないために、積み重ねていただきたいのです。
しかしながら、ただ早く始めるだけでは効果的な準備とは言えません。
そこで、次回は「受かる人が落ちてしまう、たった一つの理由」の特徴を挙げながら、面接準備の本質に迫っていきたいと思います。
みなさん自身もあらためて、どのような準備が効果的かを考えてみてください。
こうした思考力も面接の準備では重要になってくるからです。
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