公務員面接における「自己PR」は大きく変化しています。
かつては面接の定番と言えば「自己PRをお願いします」でした。しかし、令和時代に突入し、行政の採用のあり方が根本から変わろうとしている中、この面接の代名詞ともいえる質問にも変化が起こりつつあります。
自己PRは聞かれない!?
じつは「自己PRしてください」「自己PRをお願いします」といった定番中の定番の聞かれ方はここ2~3年の間にめっきり減少しています。
質問の聞き方が多様化しているのです。
例えば、ある自治体では「あなたは即戦力としてどのように活躍できますか?」とか、
別の自治体では「あなたはこれまでの経験をもとにどのように○○市に貢献できますか?」
といった、具合に変化しています。
しかし、これらの一見異なる質問にはある共通点があります。
それは、「私たち(志望先)にとって、あなたを採用することにどのようなメリットがあるかを示してください」ということなのです。
そこで、今回はこうした共通点をもとに、令和時代の公務員面接で、どのように自己PRをしていくか、という大局的な視点に立って解説を試みたいと思います。
社会人経験者枠は自己PRで合否が決まる!?
公務員面接での自己PRは、面接突破への重要な鍵を握っています。
面接官は受験者の自己PRに特に注目しており、その内容が合否に直結することが少なくありません。
なぜなら自己PRは、公務員面接の短い時間の中で、自身の能力を伝える貴重な機会だからです。
また、聞き手である面接官にとっては、ほぼ100%の確率で尋ねる質問であり、受験者にとっては打ちやすいチャンスボールのような存在です。
しかし、この絶好の機会を活かせなければ、「社会人としての採用メリットがない」と見なされるリスクがあります。不十分な自己PRは、まるで「私にはメリットがない」と自ら語っているようなもので、最悪の場合、「志望意欲が低い」との判断を同時に招きかねません。
つまり、自己PRで話す内容そのものが、面接の結果に対して大きな影響力を持つということです。
30代以降は特に重要な質問となる
特に、受験時の年齢が上がれば上がるほど、自己PRを始めとした職務に係る質問の重要性は増します。
なぜなら、「職務経験」の年数が年齢に従って増えるからです。
その経験の中で培ってきたものや肌で感じて自身に影響を与えたものこそが、20代の受験者にはない、社会人経験者だからこその強みであり、採用側にとっての最大のメリットになるのです。
だからこそ、社会人経験者にとって、自己PRを始めとした職務経験にかかわる質問の影響度は大きいといます。
そして、その影響力をプラスに働かせるのか、あるいはマイナスに働かせるのかというのは、事前の準備にかかっているといっても過言ではありません。
自己PRは作って終わりではない
これから、ある受験者の自己PRを見ていただきます。
その自己PRに対して、自分の感覚で構いませんので、1から5段階で評価を行ってください。
いかがでしたでしょうか?
5段階評価のうち、あなたは何点を付けましたか?
内容自体はわかりやすかったと思います。
しかし、実際に面接官がこの自己PRを評価するとしたら5段階のうち、ほとんど1に近い状態です。
なぜ、このような評価になるのでしょうか?
理由は2つあります。
理由1:自己PRの3つの基本を押さえられていない
理由2:社会人経験者に求められる2つのポイントが含まれていない
一体どういうことでしょうか?
具体的にみていきましょう。
自己PR 3つの基本
自己PRは単なる質問への回答ではなく、あなたの能力と経験をプレゼンテーションする機会とも言えます。
例えば、登山家が山頂に到達するまでの困難な道のりを語るように、あなたのキャリアの山々を面接官に伝えるのです。成功か失敗かはっきり分かれるこの機会で、自己PRを成功させるポイントは以下の3つです。
ポイント1:期待感を抱かせる
面接官に「この人は活躍できそうだ」と感じさせることができるかが、自己PRの成功を左右します。あなたの能力や経験が組織にどのようなプラスをもたらすかを具体的に伝えることが重要です。
このように、自己PRの準備は公務員面接の成功に不可欠なのです。
しかし、自己PRの重要性を理解しているにもかかわらず、その機会を有効に活かせていないケースがあります。
ポイント2:興味を引きつける表現
あなたが話し始めから終えるまで、面接官の興味を引き付け続けることが重要です。いくら素晴らしい経験や能力を持っていても、面接官が最後まで興味を持って聞いてくれなければ意味がありません。
具体的には、面接官は自己PRの良否を冒頭の5秒から10秒程度の間に感じ取っています。この段階で、「真剣に聞くに値するかどうか」ということを無意識に面接官は判断しています。
ポイント3:オリジナリティ
自己PRの「じこ」は「自己」と書きます。つまり、個性がなければ真の自己PRとは言えません。あなた独自の経験や考えをどのように表現するかが鍵となります。
後述する「○○力」といったありふれた表現では個性を伝えることはできません。
ではそもそも、なぜ自己PRに失敗するのでしょうか?
社会人の二人に1人が知らない自己PRの本当の意味
自己PRに失敗する大きな理由は、「誤解」と「先入観」にあります。
誤解や先入観は人それぞれで様々なものがありますが、よくある例を3つ紹介します。
1.長所との違いを把握していない
自己PRでは、単に長所を挙げるだけでは不十分です。
例えば「粘り強く物事に取り組める」とか「協調性を大切にして周囲の方と協力できます」といった内容です。こうした回答は自身の性質面を主にしています。「長所は何か?」と聞かれた時の回答としては問題ありませんが、自己PRとしては回答ズレという状態です。
なぜなら、本来の自己PRで求められているのは性質面ではなく、「ある状況に対するあなたの手立てや取組み」といった主体的な行動です。
自身の経験や能力がどのように価値をもたらすかを示すものであり、それが長所とは異なります。
2.PRだからと長めに話す
自己PRの際には、長く話すことが良いという誤解があります。しかし、20分程度の公務員面接で、2分や3分も話し続けるのは避けるべきです。長く話しすぎると、自己中心的と見なされるリスクがあります。面接官が興味を持って聞き続けられるのは、大体60秒から90秒程度が目安です。
3.成果や実績がなければならないという思い込み
成果や実績を強調しすぎることも問題です。
なぜなら、成果や実績そのものは評価対象ではないからです。無理に話を盛ったり、関係の薄い実績を引き合いに出すのは避けましょう。
かといって、成果や実績を示さなくてもいいということではありません。
事務職やデスクワークなど直接的な成果が目に見えづらい仕事であっても、成果を示しましょう。なぜなら、成果があなたの能力の裏付けになるからです。
バックオフィス系の職務経験者の場合、成果を示しづらくて自己PRに自信が持てなくなることもありますが、そうした経験でも、確実に価値を見出し伝えることができます。少し視点を変えれば成果を数値として示すことも可能です。
断言できますが、
もし仮に、派手な経歴や目立った成果がないとあなたが考えていたとしても、日々の仕事にまじめに取り組んできたのなら、面接官に評価される自己PRは確実につくることができます。
自己PRが何かを説明できますか?
評価につながる自己PRをつくるために、先述したような誤解や先入観を排除していくことももちろん大切ですが、最も重要なのは自己PRの本質を理解しているかどうか、という点です。
自己PRは、自分自身を売り込む行為ではありません。
また、単純に自分が最もがんばったときの話をすることでもありません。
そこで、次の章で自己PRの本質について、解説します。
自己PRとは何か
自己PRの際に理解しておくべき重要な概念は、「メリット」と「ベネフィット」です。これら二つの用語は、自己PRを構築する上で中心的な役割を果たします。
メリットとは?
メリットは、あなたの強みや特徴、つまり他者との違いを指します。これは、あなたが持っている特定のスキルや経験、個性など、他の候補者と区別する要素です。例えば、チームワークを円滑に進める能力や特定の技術知識などが、あなたのメリットになり得ます。
ベネフィットとは何か?
一方で、ベネフィットは、あなたの強みが受け手、すなわち面接官や採用する組織にもたらす具体的な利点や便益を指します。
つまり、あなたの強みや特徴がどのようにして組織の目標達成や問題解決に貢献するかを示すことです。
意味 | 身近な例 | |
メリット | あなたの強みや特徴 | この車は自動運転機能が備わっています。 |
ベネフィット | あなたの強みが自治体にもたらす具体的な利点や便益 | 自動運転機能があるので、ロングドライブやまさかの事態でも安全と安心を提供できます。 |
自己PRではベネフィットを伝えろ
自己PRでは、単に自分の強み(メリット)を列挙するだけでなく、それがどのように受け手に便益(ベネフィット)をもたらすかを明確に伝えることが重要です。これにより、あなたの能力や経験が具体的にどのような価値を持つかを相手に理解してもらうことができます。
ベネフィットを示せるかは公務員の仕事理解がカギを握る
ベネフィットを示す場合、自身の年齢を考慮し、職員として求められる役割にマッチさせて話すことが重要です。例えば「市民と信頼関係を築ける」とか「PCスキルがある」「高い事務処理能力がある」といった示し方は、面接官に全くと言っていいほど刺さりません。
なぜなら、それらのスキルは社会人経験者であれば最低限度に備えていなければならないものだからです。
あなたの自己PRが評価されない理由
すべての受験者が自己PRづくりには力を入れて取り組みます。
しかし、自分ではがんばって作ったつもりでも、本番の面接で評価されない自己PRとなっているケースが少なくありません。
なぜでしょうか?
自己PRが評価されない主な理由の一つは、ベネフィットの伝え方が不十分であることにあります。以下に具体例を挙げて、なぜこれらが効果的でないのかを解説します。
例1:コミュニケーション力を活かす
「前職で培ったコミュニケーション力を活かして、職員や市民と円滑にコミュニケーションすることができます」
という自己PRは、実は不十分です。
なぜなら、コミュニケーション力は社会人として最低限必要なスキルであり、公務員としても当然期待される能力だからです。
多くの公務員関連の本やネット情報で、『公務員には市民や他の職員との協力が不可欠であるためコミュニケーション力が重要である』と説明されています。
これは事実ですが、この能力はすべての公務員に共通するものであり、自己PRとして際立たせるには不適切です。
また、面接での話し方を通じて、面接官はあなたのコミュニケーション能力を十分に把握できるため、わざわざ強調する必要はありません。
例2:調整力を活かす
「調整力を活かして、他部署と協力しながら業務を進めていくことができます」
というPRも、同様に一般的であり、抽象的です。
昨今では、多くの大学生でもこのような能力を身につけているため、公務員としての特別なスキルとは言えません。また、このような表現はベネフィットとして具体性に欠け、「公務員の仕事を本当に理解しているのか?」と面接官に疑問を持たせるリスクすらあります。
確実に評価される!社会人経験者の自己PRのつくり方、2つの鍵
社会人経験者としての自己PRは、その成功が面接の合否に大きく影響します。特に公務員面接では、次の2つの鍵を押さえることが重要です。
自己PR成功の鍵1:具体的に伝える
自己PRでのベネフィットの伝え方は、具体性が求められます。抽象的な表現では、面接官があなたを採用する明確な理由を見出せません。具体的な状況や成果を示すことで、あなたの価値が明確に伝わります。
一方で、注意が必要なのは特定の分野や業務に絞り込みすぎること。
公務員の仕事はジョブローテーションを前提としており、多様な業務に適応できる柔軟性も求められます。そのため、ある特定の業務や分野だけではなく、さまざまな場面での適応能力を示すことが肝心です。
自己PR成功の鍵2:年齢を考慮して伝える
社会人経験者としての年齢は様々です。
例えば、20代後半の受験者と30代後半の受験者では、面接官が求めるベネフィットが全く異なります。
年齢別の採用基準を理解し、その上で自分の年齢に応じたベネフィットを提示することが、効果的な自己PRへとつながります。
令和の自己PRとは?
現代の公務員面接では、従来の自己PRの作成方法だけでは不十分です。令和時代の面接は、そのアプローチが変わってきています。
令和時代の面接の変化
かつては、「自己PRをお願いします」という質問が面接での能力推し量り方のスタンダードでした。
しかし、令和時代になり、面接官は質問の仕方を進化させています。
代表的な聞かれ方の例を一つ挙げましょう。
あなたがこれまで培った経験によって、○○市にどのように貢献できますか?
さて、この問いに対して、あなたは自治体側のニーズをくみ取った回答ができるでしょうか?
また、これ以外にも受験者の能力を評価するための質問は7種類に及びます。
プレゼンテーション試験
令和に入り、公務員面接の変化は加速度を増しています。
代表的な例としては「プレゼンテーション試験」の導入です。
プレゼンと聞くと、カッコいいビジネスマンがスライドを使いながらシャキッとした感じで、テンポよくロジカルに話している光景が浮かぶかもしれませんが、公務員面接で求められるプレゼンはそれとは似て非なるものです。
プレゼンはプレゼンができているかを見る試験ではありません。プレゼンの本質は自己PRと同じく「ベネフィット」を提示することにあります。
つまり、伝え方(アウトプット)は異なるけれども、伝える中身は本来の自己PRそのものなのです。
面接の本質に根差した対策を
しかし、忙しい社会人受験者にとって、自己PR系の8種類の質問やプレゼン試験に対応することは容易ではありません。実際、不可能に近いとさえ言えます。
なぜなら、備えるべき質問は自己PRだけでなく、転職理由や志望動機など多岐にわたり、それらの質問の聞き方もまた、進化・派生し続けているからです。
一方で、面接で評価の対象となる部分は2つの側面に集約されます。
公務員面接の突破校では、数限りない質問の種類、その一つ一つを追いかけるような表面的な対策ではなく、評価の核心に根差した対策方法を提供しているところに、最大の特徴があります。
つまり、「あれもこれも」といった表面的な対策ではなく、「いつまでに、何を、どのようにすべきか」といった具体的な対策方法を志望先と受験者に合わせて提示できるのは、面接の根幹に対する深い知見を有しているからこそなのです。
3倍速の想定質問の提供
例えば、8種類ある自己PR系質問や、その他の様々な質問に効果的かつ効率よく対処するため、公務員面接の突破校では「3倍速の想定質問」を提供しています。
このアプローチには以下の3つの特徴があります。
これにより、受験者は圧倒的なスピードで面接準備を進めることができます。
さらに、面接答練を通して、作成した自己PRをブラッシュアップし、面接官に確実に評価される自己PRへとアップデートすることが可能です。
公務員面接の突破校が圧倒的な合格実績を誇るのは、このような徹底した準備とサポートがあるからです。
面接の手法が発展してきた令和時代の公務員面接では、これまでの自己PRの準備方法もアップデートし、効率的で効果的な対策が求められています。
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