対策のいらない面接対策 -面接の本質-
最終面接の不合格という結果を受けて、私は面接の本質に気付き始めていました。
その本質とは、「結局、面接って普段の延長線上なのではないか?」ということです。
理解を深める
2年目の受験で私が取り掛かったのは、模擬面接でも想定問答集作りでも、自己分析でもありませんでした。
何よりもまず初めに行ったのは、「志望先選び」でした。
埼玉県には全部で64の市町村があり、全国でも2番目の数を誇ります。
ただし、生活の拠点を考えると現実的に通勤可能な市町村数は約20か所。
この中から、志望先を絞り込むことから始めました。
その方法としては、各自治体のHPを見たり、実際に市役所や町並みなどを見て回り、気になったことや興味を持ったことをどんどんノートにメモして、それを持ち帰ってはインターネットを使って、より詳しく調べていきました。そうするうちに、行政課題の本質をつかみ、自治体が求める職員像や公務員として働くイメージが湧いてきました。
事後的に振り返ると、これがいわゆる自治体研究の代わりになっていたのです。
ただ、通常の自治体研究とは大きく異なる点が2つありました。
それは「調べるために調べない」、「資料だけに頼らない」ということです。
そういったスタンスでおこなったリサーチのおかげで、「志望動機」はもちろんのこと、「公務員になりたい理由」や「県庁ではなく市役所を志望する理由」といった質問への回答も難なく整理されていきました。
また、私が初めて指導した37歳の受講者も地元ではない自治体を志望していたため、この方法をお勧めしたところ、「志望動機って何ですか?」という状態から、1週間で合格レベルの志望動機をつくれるようになったのです。
これを体系的に整理したのが今のエンノシタでの「まち研」というワークになります。
自分を高める
こうした志望先選びと並行して、自分を高めるために2つの取り組みを行いました。
1つは、実績をつくること。
当時、営業としての実力は付いてきていたものの、面接で話せるような成果はありませんでした。そこで、当時勤めていた会社の制度として「店長代行資格」という社内資格に目を付けました。
20項目の基準をクリアすることで、店長代理として店舗運営に携わることができるようになります。その時点で、12項目を取得していたので、残りの8項目を面接までにクリアし、目標を達成しました。そして、その過程を「職務経歴書」としてまとめ、面接カードとは別に、提出したのです。
最終面接ではこの職務経歴書を見た面接官からも質問をいただくことができ、効果的な自己アピールにつながりました。
また別の段でも詳しく話しますが、じつは私は市役所を3年で退職し、その後4回の転職を経験し、着実にキャリアアップを重ねてきました。
その転職を成功に導いたのもまた、職務経歴書だったのです。
つまり、事前に提出する書類が威力を発揮するのは、民間でも公務員でも同じだということです。
そこで、そのノウハウを使って、受講者の面接カードをブラッシュアップしたところ、志望先の人事担当者から「私も○○さんのこのお話しを聞いてみたいです。」とか、面接官からは「いろんな経験をされているんですね」といった言葉が思わず出るほどになりました。
たった、紙ペラ1枚で、です。
こうしたリアクションが出た面接の合否がどのように出るかは想像に難しくないでしょう。
二つ目の取り組みとしては、弱点の克服です。
幸いなことに私は営業経験をとおして、ある程度、話すスキルは身についていました。そして、想定問答も作って臨んだ試験では、最終面接までたどり着きました。
しかし、結果はご存知の通り不合格。
なぜか?
それは私の短所に起因します。
その短所とは「謙虚さ」の欠如です。
面接という特殊な環境下では、普段の力が出せないばかりか、その裏返しとして短所が顔をのぞかせることもあります。普段の力を出すための取り組みももちろん大切ですが、確実な合格のためには短所への対応も同時に行っておきたいところ。そこで、私はふだんの仕事の中で「謙虚さとは何か?」と考え、自分なりに行動に移していきました。
しかし、人の性格や特徴は、良い面もそうでない面も短期間では変わりません。
それでも、短所への取り組みは確実に、自分自身に変化をもたらしていました。
どういうことか?
私は「謙虚な人間」になったのではなく「謙虚になるスキル」を身に付けたのです。
持ち前のポジティブさと根拠のない自信は長所でもあり、行き過ぎると謙虚さを失う短所になります。そこで、その出幅を調整できるようにしたのです。
「ここまでは大丈夫。」
「ここからは相手に嫌がられる」
そうした距離感を仕事の中で掴んでいきました。
もし、今あなたに、口下手だとか、考えの整理に時間がかかる、といった自覚している短所があるのなら、普段の仕事の中でそれを補うトレーニングができます。なんせ、黙っていても一日のうち8時間は働いているわけですから。
その時間を有効活用しない手はありません。
なによりも、そこで身に付けたスキルは公務員になっても必ず役立ちます。なぜなら、仕事という実践で身に付けたスキルだから、文字通り一生モノになるわけです。 このように、普段の仕事の中で自分の強みと短所に意識的になることで、確実に成長することができます。
芯を固める
こうした取り組みを進めながら、私はあることに気付いていました。
「結局、面接って普段の延長線上なんちゃう?」
しかし、普段の延長線上にありながら、それだけでは収まらないものがあります。
それが、エンノシタでコアアンサーと呼ぶ、重要な質問に対する回答です。
面接では様々な質問が想定されますが、その中でも異質な質問が5つあります。
面接用語と言っても差し支えないでしょう。
じつはこれらの質問は、受験者が最も回答に悩むものでもあります。
なぜでしょうか?
理由は簡単で、普段の仕事や会話で話すことのない「自分の本質」を盛り込まなければならないからです。そうでなければ、面接官は納得してくれません。
面接官はあなたの本心を聞きたいと思っているからです。
ちなみにここで言う本心とは、下心とか、本音とか隠すべきこと、恥ずべきことを言っているのではありません。
自分の本質とは一言で言えば「価値観」です。
何に価値を感じるのか、その価値を得ようと、それを求めようとする動機づけ、つまりモチベーションになるものです。
例えば、子どもの頃は甘いお菓子が大好きだったと思います。
そうしたお菓子の誘惑をえさに、両親の言うことに従った経験はないでしょうか?
あるいは、両親や先生から褒められることがうれしくて、その気持ちをもう一度味わいたくて、テスト勉強に励んだこともあるかもしれません。
つまり、人は何かに価値を感じ、そのためにモチベート(動機付け)されています。
しかし、私たちは普段の仕事、組織に対して従順であろうとするあまり、この自分の動機に対してどんどん無自覚になっていきます。
ただし、無自覚になっているだけで、失われたわけではありません。
人間、何か大きな決断をするときにはその価値観が必ずと言っていいほど、その選択や判断に影響しています。
例えば、あなたが進学する大学を選んだときや就活、過去の転職、結婚、住宅購入など、人生の転換期には必ずこの価値観が影響しています。
あなたが今まさに転職を考え、数ある職業や業界の中でも「公務員」という仕事を選んだことにも、その価値観が影響しているのです。
じつは、この意思が5つの質問に色濃く反映され、自分の価値観の変遷や一貫性を物語るのです。
反対に、この回答をきちんと練り上げていないと、それぞれの回答がちぐはぐになってしまい、面接官からすると「一貫性なし」と烙印を押されることになってしまいます。
私の指導経験上、この自分の価値観が公務員という仕事に関連していることを明確に示すことができていれば20代前半くらいまでの方なら、自力で合格できます。
それほどに価値観の威力は大きいのです。
これが世間一般で言うところの「意欲や熱意」の正体です。
さて、ここで引っかかった方もいるでしょう。
そう「20代前半までならば」という点です。
何が言いたいかと言うと、年齢が上がるにしたがって、面接の準備の内容とその重みづけが変わってくるということです。 この点について、次回お話ししましょう。
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